善玉菌・悪玉菌・日和見菌とは?
私たちの腸内には、非常に多くの微生物が暮らしています。 これらの集まりは「腸内細菌叢(腸内フローラ)」や「腸内マイクロバイオータ」と呼ばれ、食事や年齢、生活環境などによって一人ひとり異なります。
腸内細菌について調べると、よく目にするのが「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」という言葉です。
これは複雑な腸内細菌の世界を理解しやすくするために使われてきた分類で、一般的には次のように説明されます。
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善玉菌:乳酸や酢酸などを作り、人にとって有用な働きに関わる菌
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悪玉菌:腸内で増えることで、好ましくない代謝産物の産生に関わることがある菌
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日和見菌:食事や周囲の腸内環境などによって働き方が変化する菌
代表的な「善玉菌」としては、乳酸菌やビフィズス菌などがよく知られています。
現在の腸内細菌研究では、この3つの呼び方を入口にしながら、さらに菌の種類や菌株、ほかの微生物との関係、食事や生活環境まで含めて考えることが重視されています。
腸内フローラは多様な微生物のつながり
以前は、「善玉菌○%、悪玉菌○%、日和見菌○%」のように、腸内細菌の理想的な割合が紹介されることもありました。
現在の研究では、健康な人同士でも腸内細菌叢の構成には大きな個人差があることが分かっています。
そのため、特定の割合だけを見るのではなく、どのような微生物が存在し、それぞれがどのような働きに関わっているのかという視点で研究が進められています。
大腸菌にもさまざまなタイプがある
大腸菌という名前を聞くと、「身体によくない菌」というイメージを持つ方も多いかもしれません。
実際には、大腸菌にはさまざまな種類があります。 人の腸内に暮らしている大腸菌もあれば、特定の性質を持ち、病原性を示すものも存在します。
つまり、「大腸菌」という大きな名前の中にも、それぞれ異なる特徴を持つ菌が含まれているということです。
これは腸内細菌を理解するうえで、とても興味深いポイントです。 菌の名前だけで分類するのではなく、「どの菌が、どのような環境で、どのように働いているのか」まで見ていくことで、腸内細菌の世界がより分かりやすくなります。
腸内細菌と毎日の食事にはどんな関係がある?
腸内細菌叢には、食事、年齢、生活環境、睡眠、運動、ストレス、医薬品の使用など、さまざまな要素との関係が研究されています。
なかでも、毎日の生活で特に身近なのが食事です。
私たちが食べたもののうち、小腸で消化・吸収されずに大腸まで届く成分の一部は、腸内細菌によって利用されます。
その代表的なもののひとつが食物繊維です。
一部の食物繊維などは腸内細菌によって発酵され、その過程で短鎖脂肪酸と呼ばれる物質が作られます。
短鎖脂肪酸には、酢酸、プロピオン酸、酪酸などがあります。 なかでも酪酸は大腸上皮細胞の重要なエネルギー源となるなど、短鎖脂肪酸と腸の働きとの関係について多くの研究が行われています。
「どんな菌がいるのか」に加えて、その菌が何を利用し、どのような物質を作っているのかを見ることも、現在の腸内細菌研究の重要な視点です。
食物繊維・発酵食品・果物を毎日の食生活へ
腸内細菌について考えるとき、まず意識しやすいのが毎日の食事です。
食物繊維は、野菜、果物、豆類、海藻、穀類、きのこ類など、さまざまな食品に含まれています。
食物繊維にも多くの種類があり、腸内細菌による利用のされ方もそれぞれ異なります。 さまざまな植物性食品を組み合わせることで、食生活にも自然と幅が生まれます。
果物やドライフルーツも食事の選択肢
果物には、食物繊維をはじめ、ビタミン、ミネラル、ポリフェノールなど、さまざまな成分が含まれています。
リンゴや柑橘類などに含まれるペクチンも食物繊維の一種です。 また、キウイフルーツなどについても、消化器や排便との関係を調べたヒト研究が行われています。
果物は、生のまま食べるほか、ドライフルーツとして楽しむこともできます。
ドライフルーツは水分が少なくなることで味が凝縮されます。 同時に糖質やエネルギーもまとまって摂りやすくなるため、量を意識しながら楽しむとよいでしょう。
また、果実やハーブを使ったフルーツティーは、果物の香りや酸味、自然な風味をティータイムに取り入れる方法のひとつです。
フルーツティーは、果実やハーブの香りや味わいを楽しむ飲み物として取り入れることができます。 一方、果物やドライフルーツは、食物繊維を含む食品として楽しむことができます。
ティータイムには果実の香りや風味を楽しみ、間食には果物やドライフルーツを選ぶなど、それぞれの特徴を知りながら生活に取り入れるのもいいですね。
発酵食品も微生物を知る入口
ヨーグルト、納豆、味噌、キムチなど、微生物の働きを利用して作られる食品は発酵食品と呼ばれます。
発酵に使われる微生物や製造方法、含まれる成分は食品によって異なります。
例えば、納豆では納豆菌、ヨーグルトでは乳酸菌など、それぞれ異なる微生物が食品づくりに関わっています。
「発酵食品」という言葉からさらに一歩踏み込んで、どのような微生物が、食品をどのように変化させているのかを知ると、普段食べている発酵食品も少し違った視点から見ることができます。
毎日の生活と腸内細菌の関係
食事に加えて、睡眠、運動、ストレスなどの生活習慣と腸内細菌叢との関係についても研究が進められています。
毎日の生活では、次のような基本的な習慣を意識してみましょう。
- 野菜・果物・豆類・穀類など、さまざまな食品を組み合わせる
- 食物繊維を含む食品を日々の食事に取り入れる
- 必要な水分を摂る
- 自分に合った睡眠時間を確保する
- 無理のない範囲で身体を動かす
- 食事や体調の変化を自分なりに把握しておく
腸内細菌叢には大きな個人差があります。 毎日の生活では、ひとつの食品だけに注目するよりも、食事全体と生活習慣を長い目で考えていくことが基本になります。
また、抗菌薬などの医薬品と腸内細菌叢との関係も研究されています。 抗菌薬は感染症などの治療で重要な役割を持つ医薬品ですので、処方された場合は医師・薬剤師の指示に従って使用しましょう。
プロバイオティクスとは?善玉菌との違い
善玉菌について知っていくと、次に気になるのが「プロバイオティクス」という言葉ではないでしょうか。
日常会話では「善玉菌」と近い意味で使われることもありますが、プロバイオティクスには国際的に使われている具体的な定義があります。
プロバイオティクスは、「適切な量を摂取したときに、宿主に健康上の利益をもたらす生きた微生物」と定義されています。
ここでいう「宿主」とは、その微生物を摂取する人など、微生物を受け入れる側を指します。
プロバイオティクスについて理解するときに注目したいのが、「どの微生物なのか」という点です。
乳酸菌やビフィズス菌という大きな分類だけでなく、プロバイオティクスについて研究を見る際には、さらに細かな菌株(strain)まで重要になります。
同じ「乳酸菌」でも菌株によって特徴が違う
「乳酸菌」と表示されているものを見ると、すべて同じような菌を想像するかもしれません。
実際には乳酸菌にもさまざまな種類があり、その中にはさらに多くの菌株があります。 同じ種類の菌でも、菌株によって特徴が異なる場合があります。
個々のプロバイオティクスについて理解するときには、使用されている菌株、菌数、対象者、摂取条件、どのような研究が行われているかを個別に確認することがポイントです。
つまり、プロバイオティクスについて考えるときには、どの微生物について、どのような条件で研究されているのかを見ることが大切です。
また、発酵食品とプロバイオティクスには、それぞれ異なる定義があります。
前回の納豆の記事でも触れたように、発酵食品は微生物の働きを利用して作られる食品です。 一方、プロバイオティクスは、特定の生きた微生物について菌株や研究条件まで含めて考える概念です。
「善玉菌」という分かりやすい入口から菌の種類や菌株まで知っていくと、プロバイオティクスについてもより理解しやすくなります。
まとめ|「善・悪」だけでなく、腸内細菌全体の働きを知ろう
「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」は、複雑な腸内細菌の世界を知るための分かりやすい入口です。
現在では、腸内細菌叢は一人ひとり異なり、さまざまな微生物が互いに関係しながら存在していることが分かってきています。 食事、年齢、睡眠、運動、生活環境などとの関係についても研究が続いています。
毎日の食生活では、野菜、果物、豆類、穀類、発酵食品など、さまざまな食品を楽しみながら取り入れることがひとつの基本です。 果物やドライフルーツ、果実を使ったティーなど、それぞれの特徴を知ることで食生活にも自然と幅が生まれます。
さらに腸内細菌について知っていくと、乳酸菌やビフィズス菌だけでなく、プロバイオティクスや発酵食品についても、より深く理解できるようになります。
善玉菌・悪玉菌という入口から一歩進んで、微生物と私たちの食生活との関係に目を向けてみると、普段の食事も少し違った視点から楽しめるようになるかもしれません。
ご注意
この記事は、善玉菌、悪玉菌、腸内細菌、腸内フローラ、食物繊維、発酵食品およびプロバイオティクスに関する一般的な情報提供を目的としています。 特定の食品や成分による疾病の診断・治療・予防を目的としたものではありません。 腹痛、下痢、便秘などの症状が長く続く場合や、血便、体重減少、強い腹痛などがある場合には、医療機関へご相談ください。
なお、本文中で紹介している研究や一般的な定義は、記事外に表示される個別の商品について、その効果や機能を示すものではありません。
参考文献
- Hill C, et al. The International Scientific Association for Probiotics and Prebiotics consensus statement on the scope and appropriate use of the term probiotic. Nature Reviews Gastroenterology & Hepatology. 2014.
- Marco ML, et al. The International Scientific Association for Probiotics and Prebiotics (ISAPP) consensus statement on fermented foods. Nature Reviews Gastroenterology & Hepatology. 2021.
- NIH Office of Dietary Supplements. Probiotics Fact Sheet for Health Professionals.
- Valdes AM, et al. Role of the gut microbiota in nutrition and health. BMJ. 2018.
- Makki K, et al. The Impact of Dietary Fiber on Gut Microbiota in Host Health and Disease. Cell Host & Microbe. 2018.