「最近、代謝が落ちた気がする」
「基礎代謝が高いと痩せやすい?」
「新陳代謝が良いと肌にもいい?」
美容やダイエット、健康の話では、「代謝」という言葉がよく登場します。
ところが、新陳代謝・基礎代謝・エネルギー代謝・脂肪燃焼、さらには「メタボ」まで、実は同じ「代謝」という言葉につながるものがたくさんあります。
なかでも混同されやすいのが、「新陳代謝」と「基礎代謝」です。
この2つは、それぞれ違った体の仕組みを表しています。
さらに体の仕組みを知っていくと、「汗をたくさんかいたから脂肪がたくさん燃えた」「30代になったから代謝が一気に落ちた」といったイメージも、少し違った角度から見えてきます。
この記事では、新陳代謝と基礎代謝の違いを入り口に、1日に私たちがどのようにエネルギーを使っているのか、脂肪燃焼とは何を意味するのか、年齢・筋肉・運動・食事・睡眠との関係、さらに肌のターンオーバーまで、現在の知見をもとにわかりやすく解説します。
目次
- 新陳代謝と基礎代謝の違いとは?
- 基礎代謝は1日のエネルギー消費の土台
- 脂肪燃焼を正しく理解するとダイエットが分かりやすくなる
- 年齢とともに代謝はどのくらい変わる?
- 代謝を支える毎日の生活習慣
- 新陳代謝と美容・肌のターンオーバーの関係
まず知っておきたいのが、新陳代謝と基礎代謝は、それぞれ違った意味で使われる言葉だということです。
日常会話で使われる「新陳代謝」という言葉には、古いものから新しいものへ入れ替わっていくイメージがあります。
たとえば皮膚では新しい細胞がつくられ、表面へ移動しながら最終的に角質として剥がれていきます。
血液の細胞をはじめ、体のさまざまな組織でも、それぞれの仕組みによって細胞や成分の入れ替わりが続いています。
一方、生理学でいう「代謝(metabolism)」は、さらに広い意味を持っています。
私たちの体の中では常に、
- 食べ物から得た栄養素を分解する
- 栄養素からエネルギーを取り出す
- アミノ酸からたんぱく質をつくる
- 体に必要なさまざまな物質を合成する
- 役割を終えた物質を分解・処理する
といった膨大な化学反応が行われています。
物質を分解しながらエネルギーなどを取り出す働きを「異化」、エネルギーを使って体に必要な物質をつくる働きを「同化」と呼びます。
このような体内の化学反応全体を広く表す言葉が「代謝」です。
そして基礎代謝(Basal Metabolic Rate:BMR)は、一定の安静条件のもとで、呼吸や循環、体温維持、臓器の活動など、生命を維持するために使われるエネルギー量を表します。
分かりやすく整理すると、
新陳代謝:日常語では、細胞や組織がつくられ、入れ替わっていく働きを表すことが多い言葉
代謝:体内で行われる物質の合成・分解などを含む幅広い生命活動
基礎代謝:安静時の生命維持に必要となるエネルギー消費
という関係になります。
ところで、日本でよく言う「メタボ」の“メタボ”も代謝?
ここで少し面白いのが、日本ですっかりお馴染みになった「メタボ」という言葉です。
「最近お腹が出てきたからメタボかな」など、日常会話では体型を表すような言葉として使われることもあります。
この「メタボ」の正式名称は「メタボリックシンドローム(Metabolic Syndrome)」です。
英語のmetabolicは「代謝に関する」という意味。
そして、その元になっているmetabolismが「代謝」です。
つまり、
metabolism = 代謝
metabolic = 代謝に関する
metabolic syndrome = メタボリックシンドローム
と、実はすべて同じ言葉の仲間なのです。
医学的なメタボリックシンドロームは、体型だけで決まるものではなく、内臓脂肪の蓄積を背景に、血圧・血糖・血中脂質など複数の要因を組み合わせて評価する状態です。
日本では、腹囲が男性85cm以上・女性90cm以上であることに加え、血圧・血糖・脂質の3項目のうち2項目以上が基準に該当することが診断基準となっています。
普段何気なく使っている「メタボ」という言葉まで「代謝」につながっていると知ると、metabolismという言葉が体のさまざまな仕組みに関係していることが分かります。
ソファでくつろいでいるときも、眠っているときも、私たちの体の中ではさまざまな活動が続いています。
心臓は拍動し、肺では呼吸が行われ、脳や肝臓、腎臓などの臓器も働いています。
体温を保ち、細胞の活動を続けるためにもエネルギーが使われています。
こうした生命維持を支えるエネルギー消費の土台となるのが基礎代謝です。
1日に使うエネルギーは3つに分けて考えられる
私たちが1日に消費するエネルギーは、大きく3つに分けることができます。
-
基礎代謝:生命維持のために使われるエネルギー
-
食事誘発性熱産生:食べたものを消化・吸収・代謝するときに使われるエネルギー
-
身体活動:運動、歩行、家事、仕事など体を動かすことで使われるエネルギー
標準的な身体活動レベルの人では、1日の総エネルギー消費量の目安として、基礎代謝が約60%、食事誘発性熱産生が約10%、身体活動が約30%を占めるとされています。
「何もしていない時間にも、こんなにエネルギーを使っているの?」と感じる方もいるかもしれません。
それほど私たちの体は、意識して動かしていない時間にも多くの仕事をしているのです。
基礎代謝量は、体格・体組成・年齢・性別・臓器や筋肉などの組織量をはじめとするさまざまな要因によって変わります。
そして、1日のエネルギー消費の中で生活によって比較的変化させやすい部分が身体活動です。
身体活動にはスポーツだけでなく、歩く、階段を上る、掃除をする、買い物へ行く、立って作業するなど、日常の動きも含まれます。
「基礎代謝を上げること」だけに注目するよりも、1日の中でどのくらい体を動かしているかまで見ると、エネルギー消費の仕組みがぐっと分かりやすくなります。
脂肪燃焼を正しく理解するとダイエットが分かりやすくなる
ダイエットの話でよく登場する「脂肪燃焼」。
この言葉も、仕組みを知っておくと運動の見方が変わります。
体を動かすために必要なエネルギーは、主に糖質や脂質などからつくられます。
運動の強度や時間、食事の状態、トレーニング習慣などによって、そのときにどのエネルギー源が多く使われるかという割合は変化します。
一般に低~中程度の運動では脂質をエネルギー源として利用する割合が比較的大きくなり、運動強度が高まるにつれて糖質を利用する割合も大きくなります。
「脂肪を使う割合」と「体脂肪の変化」は別の視点で考える
ここでポイントになるのが、運動中に脂質がどのくらい使われたかという割合と、長期的な体脂肪の変化は別の視点で考えることです。
ゆっくりした運動では、消費エネルギーの中で脂質が占める割合が高くなることがあります。
一方、強度の高い運動では糖質を多く使いながら、一定時間あたりの総エネルギー消費が大きくなる場合があります。
体脂肪の変化を長い期間で見るときには、食事から摂取するエネルギーと、基礎代謝・身体活動などを合わせたエネルギー消費とのバランスが重要になります。
そのため、「脂肪燃焼率が一番高い運動」を探すより、
歩く。
走る。
自転車に乗る。
筋力トレーニングをする。
といったさまざまな活動の中から、自分が続けやすい方法を選んで身体活動量を確保していくことが大切です。
「汗をかいた=脂肪が燃えた?」
これも代謝にまつわる、よくある疑問です。
汗の大きな役割は体温調節です。
暑い日にじっとしていても汗をかきますし、サウナでも大量に汗をかきます。
運動後に体重が一時的に軽くなることがありますが、その大きな部分は発汗による水分変化です。
運動を見るときには汗の量だけで判断せず、どのくらい体を動かしたか、どのくらい続けたか、そして習慣として続いているかを見ると、より実際的です。
「30代になって代謝が落ちた」
「40代になると昔より痩せにくくなる」
そんな話を耳にすることがあります。
年齢とともに体組成や筋肉量、生活スタイル、身体活動量などが変化するため、エネルギー消費にも変化が生まれます。
ただ、近年の大規模研究からは、もう少し興味深い姿が見えてきています。
実は「20歳を過ぎたら代謝が毎年急降下」ではない
8日齢の乳児から95歳まで、世界各国の人々のエネルギー消費を調べた大規模研究では、体格や除脂肪量などを調整した1日のエネルギー消費量は、およそ20歳から60歳まで比較的安定していたことが報告されています。
その後、60歳を過ぎる頃から徐々に低下する傾向が確認されました。
これは、「30歳になった瞬間から体そのものの代謝能力が毎年大きく落ち続ける」というイメージよりも、代謝と年齢の関係が複雑であることを示しています。
一方、実際の生活では年齢を重ねるにつれて、歩く時間が減ったり、座って過ごす時間が増えたり、筋肉を含む除脂肪量が変わったりすることがあります。
つまり年齢を見るだけでなく、今の自分の筋肉量、体格、日々の活動量、生活スタイルまで一緒に考えることがポイントです。
「年齢だから仕方がない」と考えるよりも、今できる身体活動を続けていくほうが、日々の健康づくりにつながります。
代謝は、ひとつの特別な方法で突然切り替わるものではなく、私たちが生きている限り24時間続いている体の基本的な仕組みです。
その働きを支える土台になるのが、身体活動・筋肉・食事・睡眠などの日々の生活です。
1.日常の中で少し多く体を動かす
身体活動というと、ランニングやスポーツを思い浮かべる方も多いでしょう。
しかし実際には、買い物へ歩く、階段を使う、掃除をする、庭仕事をする、長時間座ったあとに立って動くといった日常生活も立派な身体活動です。
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」でも、成人について「今よりも少しでも多く身体を動かす」という考え方が基本になっています。
まとまった運動時間を確保することと同時に、日常生活の中に「動く時間」を増やしていくことも大切です。
2.有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせる
ウォーキングやジョギング、自転車などの有酸素運動では、活動中にエネルギーが使われます。
筋力トレーニングは、筋力や筋量、身体機能を維持・向上させるために役立ちます。
筋肉も安静時にエネルギーを消費する組織のひとつです。
同時に、筋力を保つことで歩く、階段を使う、外出するといった日々の身体活動を続けやすくなることも大切なポイントです。
厚生労働省では成人に、歩行またはそれと同等以上の身体活動を1日60分以上、息が弾み汗をかく程度の運動を週60分以上、筋力トレーニングを週2~3日行うことを推奨しています。
もちろん体力や健康状態には個人差があります。
自分に合った強度や量から始め、少しずつ習慣にしていくことが基本です。
3.食べる量だけでなく「食事の質」にも目を向ける
私たちの体は、食べ物から得た糖質・脂質・たんぱく質などを利用してエネルギーをつくり、体を構成するさまざまな物質を合成しています。
つまり食事そのものが、体内で行われる代謝の材料になります。
主食・主菜・副菜などを組み合わせながら、たんぱく質、ビタミン、ミネラルを含むさまざまな食品を取り入れることが、毎日の食生活の基本です。
特に筋肉を維持するためには、身体活動とともに日々の食事から必要なたんぱく質を摂ることも大切です。
特定の「代謝アップ食品」に頼るより、毎日の食事全体を整えることが、体のさまざまな代謝を支える土台になります。
4.睡眠も体のリズムをつくる大切な時間
眠っている間も、体内ではさまざまな生理活動が続いています。
睡眠は休息だけでなく、食欲やホルモン、生活リズムなどとも関係しています。
十分な睡眠を確保することは、食事や運動とともに毎日の健康づくりを支える重要な生活習慣です。
よく食べ、よく動き、しっかり休む。
シンプルですが、代謝を考えるときにもこの基本はとても大切です。
5.食べ物や飲み物は「代謝」だけでなく楽しさも大切に
生姜、唐辛子、コーヒー、緑茶、ハーブティーなど、「代謝」という言葉と一緒に紹介される食品や飲み物はたくさんあります。
また、食事をすると消化・吸収・代謝の過程でエネルギーが使われる「食事誘発性熱産生」という仕組みもあります。
ただ、毎日の体づくりで大切なのは、ひとつの食品だけに注目することではなく、食事全体と生活全体を見ることです。
温かい飲み物を楽しむ。
香りのよいお茶でゆったり過ごす。
季節の野菜や果物を楽しむ。
こうした食生活の楽しさも大切にしながら、身体活動・食事・筋力・睡眠を組み合わせた生活を続けていくことが、無理のない健康づくりにつながります。
新陳代謝と美容・肌のターンオーバーの関係
美容の世界でも「新陳代謝」という言葉はよく登場します。
特に身近なのが肌のターンオーバーです。
皮膚の表面にある表皮では、新しい細胞がつくられ、分化しながら表面へ移動し、最終的には角質として剥がれ落ちていきます。
私たちが何も意識していない間にも、皮膚ではこうした更新が続いています。
肌では「適切なリズム」が大切
「肌は28日で生まれ変わる」という表現を見かけることがありますが、実際のターンオーバーにかかる時間は、年齢、体の部位、皮膚の状態、測定方法などによって変わります。
美容で大切なのは、ターンオーバーをできるだけ速くすることよりも、皮膚が本来の更新とバリア機能を保てる環境を整えることです。
紫外線から肌を守ること。
適切に洗浄し、保湿すること。
バランスのよい食生活を心がけること。
十分な睡眠や身体活動を取り入れること。
こうした基本的な生活とスキンケアが、美容を支える土台になります。
また、肌のターンオーバーと基礎代謝は、それぞれ異なる仕組みです。
「基礎代謝=消費エネルギー」「肌のターンオーバー=表皮の更新」と整理しておくと、美容情報で登場する「代謝」という言葉にも振り回されにくくなります。
まとめ|「代謝」という言葉を知ると、体の仕組みがもっと面白くなる
「代謝」という一言の中には、実はいくつもの意味があります。
新陳代謝は、日常的には細胞や組織が新しく入れ替わっていくイメージで使われます。
生理学でいう代謝は、体内で行われる物質の合成・分解を含む幅広い生命活動を指します。
そして基礎代謝は、安静時にも生命を維持するために使われるエネルギー量です。
さらに、普段何気なく使っている「メタボ」もmetabolism(代謝)と同じ言葉の仲間だと分かると、「代謝」という言葉が少し身近に感じられるのではないでしょうか。
体重管理を考えるときも、基礎代謝の数字だけを見るのではなく、
日常で少し多く動く。
有酸素運動と筋力トレーニングを取り入れる。
必要な栄養を食事から摂る。
睡眠を含めた生活リズムを整える。
という生活全体を見ることがポイントです。
美容についても、肌のターンオーバーの仕組みを知ることで、「新陳代謝を上げれば美肌になる」という単純な考え方から一歩進み、毎日のスキンケアや生活習慣をより現実的に考えられるようになります。
「代謝を上げる方法」だけを探すのではなく、自分の体の中で毎日どんなことが起きているのかを知る。
その知識が、無理のない体重管理や、長く続けられる健康・美容習慣を考えるための第一歩になります。
ご注意
本記事は、代謝、エネルギー消費、身体活動、肌のターンオーバーなどについての一般的な情報提供を目的としています。
健康状態や体重の変化について気になることがある場合は、必要に応じて医師などの専門家へご相談ください。