納豆はどんな発酵食品?
納豆は、日本の食卓で長く親しまれてきた大豆の発酵食品です。
蒸したり煮たりした大豆に納豆菌を加えて発酵させることで、独特の香りや風味、そして糸を引くネバネバが生まれます。
納豆の成分というと「ナットウキナーゼ」がよく知られていますが、納豆にはそれ以外にもさまざまな栄養・成分が含まれています。
大豆由来のタンパク質や食物繊維に加え、ビタミンK2、ポリグルタミン酸なども納豆を特徴づける成分です。
そして、納豆作りに欠かせない納豆菌(Bacillus subtilis var. natto)も重要な存在です。
「発酵食品だから身体によさそう」というイメージだけでなく、納豆がどのように作られ、どのような成分を含んでいるのかを知ると、身近な納豆を少し違った角度から見ることができます。
納豆のネバネバ成分「ポリグルタミン酸」とは?
納豆を箸で混ぜると、白っぽい糸がどんどん伸びていきます。
この独特の粘りに大きく関係しているのがポリグルタミン酸(Poly-γ-glutamic acid:γ-PGA)です。
ポリグルタミン酸は、アミノ酸の一種であるグルタミン酸が多数つながってできた高分子化合物で、納豆菌が発酵する過程で作り出します。
納豆のネバネバにはポリグルタミン酸をはじめとする複数の成分が含まれており、納豆特有の粘りや食感を作り出しています。
ポリグルタミン酸は保水性などの特徴を持つことから、食品分野をはじめ、化粧品やさまざまな素材分野でも研究・利用されています。
ポリグルタミン酸とカルシウムの研究
食品分野では、ポリグルタミン酸とカルシウムの吸収との関係についても研究されています。
健康な閉経後女性24名を対象とした小規模なヒト試験では、カルシウムとともに60mgのポリグルタミン酸を単回摂取した場合に、カルシウム吸収率が高くなったことが報告されています。
この研究から読み取れるのは、ポリグルタミン酸を一定の条件で単回摂取した際のカルシウム吸収に関する結果です。
納豆に含まれる成分と栄養との関係を知るうえで、興味深い研究のひとつといえるでしょう。
ナットウキナーゼとは?納豆の発酵で生まれる酵素
納豆の成分として特に名前を知られているのがナットウキナーゼです。
ナットウキナーゼは、納豆菌が大豆を発酵させる過程で作り出すタンパク質分解酵素のひとつです。
ナットウキナーゼとポリグルタミン酸は、それぞれ異なる特徴を持っています。
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ポリグルタミン酸:納豆の粘りに関わる高分子成分
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ナットウキナーゼ:納豆菌が発酵の過程で作り出す酵素
ナットウキナーゼについては、血液凝固や線溶系、血圧などとの関係を調べる研究が行われています。
近年では、複数の臨床試験をまとめて評価する研究も発表されています。
研究によって対象者、摂取量、期間などの条件が異なるため、結果を見るときにはそれぞれの研究条件を区別して理解することが大切です。
日常の納豆については、ナットウキナーゼというひとつの成分だけに注目するよりも、大豆と発酵によって生まれるさまざまな栄養・成分を含む食品として捉えると分かりやすいでしょう。
納豆に多いビタミンK2と骨の健康
納豆のもうひとつの特徴が、ビタミンK2を多く含んでいることです。
ビタミンKにはいくつかの種類があり、納豆にはビタミンK2の一種であるメナキノン-7(MK-7)が豊富に含まれています。
ビタミンKは、正常な血液凝固に必要な栄養素であるとともに、骨の健康にも関わっています。
骨にはオステオカルシンと呼ばれるタンパク質があり、ビタミンKはこのタンパク質が正常に働くために必要です。
カルシウムやビタミンDなどとともに、ビタミンKも骨の健康を支える栄養素のひとつとして知られています。
納豆にはビタミンK2のほか、ポリグルタミン酸など、カルシウムや骨との関係が研究されている成分も含まれています。
さまざまな成分をあわせ持っていることも、発酵食品である納豆の興味深い特徴です。
ワルファリンを服用している場合は納豆に注意
納豆について特に知っておきたいのが、ワルファリンとの相互作用です。
ワルファリンは、ビタミンKの働きを抑えることで血液を固まりにくくする医薬品です。
納豆にはビタミンKが多く含まれ、さらに納豆菌もビタミンK産生に関わるため、ワルファリンの作用を弱める可能性があります。
ワルファリンを服用している方は、納豆の摂取を控える必要があります。
時間を空けて食べる方法では相互作用を避けられないため、医師・薬剤師から受けている食事指導に従ってください。
治療中の方や医薬品を服用している方が食生活やサプリメントを変更するときには、医師や薬剤師へ確認しておくことも大切です。
納豆はプロバイオティクスなの?
納豆について知っていくと、
「納豆は発酵食品だから、プロバイオティクスなの?」
という疑問を持つ方もいるかもしれません。
納豆は、納豆菌の働きを利用して大豆を発酵させて作る食品です。
一方、「発酵食品」と「プロバイオティクス」には、それぞれ異なる定義があります。
国際的な専門家による定義では、発酵食品は「目的とする微生物の増殖と、食品成分の酵素的な変換によって作られる食品」とされています。
納豆をはじめ、ヨーグルト、味噌、キムチなど、微生物の働きを利用して作られるさまざまな食品が発酵食品として知られています。
一方、プロバイオティクスは、適切な量を摂取したときに健康上の利益をもたらすことが確認された特定の生きた微生物を指します。
そのため、プロバイオティクスとして考える際には、どのような菌株なのか、どの程度の量が含まれているのか、その菌についてどのような研究が行われているのかといった点が重要になります。
納豆菌についても、微生物と人の健康との関係を調べるさまざまな研究が行われています。
納豆をきっかけに発酵の仕組みを知ることは、納豆菌だけでなく、乳酸菌やビフィズス菌、腸内細菌、プロバイオティクスなど、微生物と私たちの食生活との関係について理解を広げる入口にもなります。
毎日の食事に納豆を取り入れるときのポイント
納豆は、大豆そのものの栄養と、発酵によって生まれるさまざまな特徴をあわせ持つ食品です。
毎日の食生活を構成する食品のひとつとして、ほかの食品と組み合わせながら取り入れることができます。
食事に取り入れる際には、次のようなポイントを意識してみましょう。
- ご飯だけでなく、野菜や卵、海藻などさまざまな食品と組み合わせる
- 一つの食品に偏らず、食事全体のバランスを意識する
- 塩分が気になる場合は、付属のたれや調味料の量を調整する
- 大豆アレルギーがある場合は原材料を確認する
- 治療中や服薬中の場合は、食事について受けている医療専門家の指示を確認する
自分の食生活や体質に合わせて、無理のない範囲で楽しみながら取り入れることが大切です。
まとめ|納豆はさまざまな成分を含む発酵食品
納豆は、大豆を納豆菌で発酵させて作る日本の伝統的な発酵食品です。
よく知られているナットウキナーゼに加え、ポリグルタミン酸、ビタミンK2、大豆由来のタンパク質や食物繊維など、さまざまな成分を含んでいます。
発酵によって生まれる成分については、カルシウム吸収や血液凝固・線溶系などとの関係を調べる研究も行われています。
研究を見る際には、対象者、摂取量、期間などの条件を区別して理解することが大切です。
また、発酵食品とプロバイオティクスには、それぞれ異なる特徴と定義があります。
納豆をきっかけに発酵の仕組みを知ることで、納豆菌、乳酸菌、ビフィズス菌、腸内細菌など、微生物と食生活との関係についてさらに理解を広げることができます。
ご注意
この記事は、納豆、納豆菌、ナットウキナーゼ、ポリグルタミン酸、ビタミンK、発酵食品およびプロバイオティクスに関する一般的な情報提供を目的としています。
特定の食品や成分による疾病の診断・治療・予防を目的としたものではありません。
治療中の方、医薬品を服用している方、食事について医師から指導を受けている方は、食品やサプリメントの摂取について医師・薬剤師へご相談ください。
参考文献
- Marco ML, et al. The International Scientific Association for Probiotics and Prebiotics (ISAPP) consensus statement on fermented foods. Nature Reviews Gastroenterology & Hepatology. 2021.
- NIH Office of Dietary Supplements. Vitamin K Fact Sheet for Health Professionals.
- Tanimoto H, et al. Acute effect of poly-gamma-glutamic acid on calcium absorption in post-menopausal women. Journal of the American College of Nutrition. 2007;26(6):645-649.
- Nattokinase Supplementation and Cardiovascular Risk Factors: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials.
- 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)「ワルファリンと納豆等の食品について」