甘くスパイシーな香りが魅力のシナモン。シナモンロールやアップルパイ、チャイなどでおなじみですが、日本では昔から「ニッキ」の香りも八つ橋や飴などに使われてきました。
シナモンは世界各地の料理やお菓子に使われてきた香辛料であると同時に、含まれる成分と健康との関係についてさまざまな研究が行われているスパイスでもあります。
シナモンについて調べると、血糖値やコレステロール、ポリフェノールなどさまざまな言葉が出てきます。大切なのは、それぞれがどのような研究で調べられているのかを知り、日常の食品としてのシナモンと研究情報を分けて理解することです。
今回は、シナモンについて現在研究されていることを分かりやすく整理しながら、セイロンシナモンとカシアの違い、日本で親しまれてきたニッキの歴史、ニッキ飴の秘密、そして紅茶や料理での楽しみ方まで紹介します。
シナモンとニッキは近い仲間|違いを簡単に
シナモンとニッキは、どちらもクスノキ科ニッケイ属(Cinnamomum)の植物に由来します。
そのため香りには共通する部分がありますが、使われる植物の種類や部位、香りや辛味の強さにはそれぞれ特徴があります。
一般に「シナモン」と呼ばれているものにも複数の種類があり、代表的なのがセイロンシナモンやカシアです。一方、日本で「ニッキ」と呼ばれてきた植物として、ニッケイ(Cinnamomum sieboldii)があります。
シナモンとニッキの原料や香りの違いについては別の記事で詳しく紹介しているため、今回は一歩進んで、シナモンの研究や種類、ニッキを使った日本の食文化に注目してみましょう。
シナモンについて研究されていること
シナモンにはさまざまな植物由来成分が含まれており、これまで血糖値や血中脂質との関係、香気成分、ポリフェノールなど幅広いテーマで研究されてきました。
ここで知っておきたいのが、「シナモン」とひとことで呼ばれていても、研究に使われる品種や植物の部位、抽出方法、摂取量などは研究ごとに異なるということです。
米国の国立補完統合衛生センター(NCCIH)も、シナモンに関する研究を読み解くうえでは、どの種類や部位が使われたのかが重要なポイントになるとしています。
血糖値との関係
シナモンの研究の中でも、特によく取り上げられてきたテーマが血糖値との関係です。
2型糖尿病や糖尿病予備群の人などを対象に、シナモンを摂取した場合の空腹時血糖などの数値を調べた研究が多数行われています。
研究によって対象者、シナモンの種類、摂取量、期間などが異なるため、現在はそれぞれの研究条件を確認しながら結果を読み解くことが重要とされています。
毎日の食生活では、シナモンは料理や飲み物に香りを添えるスパイスとして楽しみながら、その成分について研究が続けられている食品と捉えると分かりやすいでしょう。
コレステロールや中性脂肪との関係
シナモンと血中脂質との関係についても研究が行われています。
2型糖尿病の人などを対象とした研究の中には、総コレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪などの数値について変化が報告されたものがあります。
こちらも研究条件によって結果が異なるため、シナモンに含まれる成分と体内の代謝との関係を調べる研究分野のひとつとして理解しておくとよいでしょう。
シナモンらしい香りをつくる「シンナムアルデヒド」
シナモンの魅力を語るうえで欠かせないのが、甘さと刺激を感じさせる独特の香りです。
このシナモンらしい香りをつくる代表的な成分のひとつが、シンナムアルデヒド(ケイ皮アルデヒド)です。
シナモンやカシアの樹皮から得られる精油の主要な香気成分として知られており、シナモンを少量加えただけでも料理や飲み物の印象が大きく変わる理由のひとつです。
味そのものだけでなく、鼻へ抜ける香りまで楽しめるところがシナモンのおもしろさです。
ポリフェノールなどの植物由来成分
シナモンには、ポリフェノールをはじめとするさまざまな植物由来成分が含まれています。
これらの成分については、抗酸化性などの性質を調べる基礎的な研究も行われています。
食品に含まれる成分について知ることは、その食品そのものをより深く理解するきっかけになります。シナモンも、香りづけだけでは見えてこないさまざまな成分を持つ植物なのです。
セイロンシナモンとカシアの違い|クマリンも知っておこう
スーパーやスパイス専門店でシナモンを探すと、「セイロンシナモン」や「カシア」という名前を見かけることがあります。
どちらもシナモンとして利用されていますが、植物の種類や香り、含まれる成分には違いがあります。
セイロンシナモン
セイロンシナモン(Cinnamomum verum)はスリランカを代表するシナモンで、「トゥルーシナモン(True Cinnamon)」と呼ばれることもあります。
比較的繊細で甘く上品な香りを持つことから、紅茶、お菓子、デザートなど幅広く楽しめます。
カシア
カシアはセイロンシナモンより力強く、スパイシーさを感じやすい香りが特徴です。
しっかりとシナモンの存在感を出したい焼き菓子や料理にもよく合います。
スティックなら見た目にも違いがある
ここでひとつ、シナモン選びに使える豆知識があります。
セイロンシナモンのスティックは、薄い樹皮が何層にも重なるように巻かれており、断面を見ると細かな層がたくさん見えます。
一方、カシアは比較的厚い樹皮がくるりと巻かれた形をしています。
パウダーになると外見から種類を見分けることが難しくなるため、セイロンシナモンなど種類を指定して選びたい場合は、商品表示を確認する方法が分かりやすいでしょう。
シナモンに含まれる「クマリン」とは?
シナモンについて知っておきたい成分のひとつが「クマリン」です。
クマリンはシナモンを含むさまざまな植物に存在する天然の香気成分です。
シナモンの種類によって含まれる量が異なり、一般にカシアには比較的多く、セイロンシナモンには少ないことが知られています。
ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)では、家庭でシナモンを頻繁に多く使用する場合の選択肢として、クマリン含有量の少ないセイロンシナモンを紹介しています。
一般的な料理や飲み物では、シナモンは少量でも十分に豊かな香りを楽しめます。香りの好みや使い方に合わせて種類を選ぶのも、シナモンの楽しみ方のひとつです。
ニッキの歴史とニッキ飴の秘密
海外のイメージが強いシナモンに対して、「ニッキ」と聞くと八つ橋や昔ながらの飴を思い浮かべる人も多いでしょう。
実は、このニッキにも日本ならではの興味深い歴史があります。
ニッキが日本にやってきたのは江戸時代
日本薬学会によると、ニッキとして知られるニッケイ(Cinnamomum sieboldii)は、享保年間(1716~1735年)に中国から日本へ渡来したとされています。
当時、本来はカシアに使われるはずだった「肉桂」という名称がニッケイに付けられ、その呼び名が日本で定着したという、少し意外な歴史があります。
ニッケイは樹皮よりも根の皮に香りと強い辛味があり、その特徴が京都名物の八つ橋などの風味づけに利用されてきました。
さらに、昔ながらのニッケイは現在では市場に出回る量がかなり少なくなっているとされています。
身近なお菓子の香りから、江戸時代まで歴史をさかのぼれるというのもニッキのおもしろいところですね。
なぜニッキ飴はあんなに辛い?
ニッキを使った昔ながらのお菓子として有名なのが「ニッキ飴」です。
口に入れたときには飴らしい甘さを感じながら、そのあとにピリッとした刺激と独特の香りが鼻へ抜けていきます。
子どもの頃に初めて食べて、「思ったより辛い!」と驚いた経験がある方もいるのではないでしょうか。
ニッキ飴は砂糖や水あめなどをベースに、桂皮由来の粉末やオイル、香料などを組み合わせて風味をつくる商品が多くあります。
使用する原料や配合はメーカーによって異なるため、同じ「ニッキ飴」でも香りや辛さには個性があります。
- 刺激をしっかり楽しめる昔ながらのタイプ
- 甘さとのバランスを重視したタイプ
- 黒糖などを組み合わせたタイプ
- 桂皮由来の香りを強く感じられるタイプ
食べ比べてみると、メーカーごとの違いを楽しめるのもニッキ飴ならではです。
八つ橋とニッキ飴というまったく違うお菓子に、同じ系統のスパイシーな香りが生かされているところにも、日本の食文化のおもしろさがあります。
シナモンのおいしい使い方|紅茶・料理・保存のコツ
シナモンの魅力は、ほんの少量でもいつもの料理や飲み物に新しい香りを加えられることです。
お菓子だけでなく、紅茶、コーヒー、果物、乳製品、カレーや煮込み料理など幅広い食材と組み合わせられます。
パウダーとスティックを使い分ける
家庭でよく見かけるシナモンには、パウダーとスティックがあります。
シナモンパウダーは、料理や飲み物へそのまま振りかけられる手軽さが魅力です。
- ミルクティー
- コーヒー
- ヨーグルト
- オートミール
- トースト
- リンゴやバナナなどの果物
- 焼き菓子
一方、シナモンスティックは、飲み物や煮込み料理へゆっくり香りを移したいときに便利です。
紅茶やチャイ、ホットドリンク、煮込み料理などへ加えて温めることで、シナモンらしい香りをじっくり楽しめます。
果物との相性も抜群
シナモンと相性のよい代表的な食材が果物です。
リンゴとシナモンはアップルパイでもおなじみの組み合わせですが、バナナ、オレンジ、洋梨などともよく合います。
切った果物に少量振りかけたり、ヨーグルトと一緒に食べたりするだけでも、いつもとは少し違った香りを楽しめます。
紅茶にシナモンを加えて楽しむ
シナモンを手軽に取り入れる方法として特におすすめなのが、紅茶との組み合わせです。
ブラックティーにシナモンを少量加えるだけでも、甘くスパイシーな香りが広がります。
ミルクを加えてチャイのように楽しんだり、リンゴやオレンジなどのフルーツ系ティーと合わせたりするのもおすすめです。
シナモンには香りそのものに甘い印象があるため、普段の紅茶へ香りのアクセントを加えたいときにも活躍します。
パウダーならほんの少量から、スティックなら紅茶を淹れるときに一緒に使うなど、自分好みの香りの強さを探してみてください。
香りを楽しむための保存方法
シナモンの大きな魅力は香りです。保存するときも、その香りを保ちやすい環境を意識すると長く楽しめます。
- 容器をしっかり密閉する
- 直射日光を避ける
- 高温多湿を避ける
- 普段使う量に合わせて購入する
特にパウダーは表面積が大きいため、スティックよりも香りの変化を感じやすくなります。
開封後はしっかり密閉し、香りを確認しながら使うと、シナモンらしい風味を楽しみやすくなります。
シナモンとニッキを香り豊かな食生活に取り入れよう
シナモンは、世界中の料理やお菓子、飲み物で長く親しまれてきた香り豊かなスパイスです。
セイロンシナモンやカシアなどの種類があり、それぞれ香りや成分に特徴があります。また、シンナムアルデヒドやポリフェノールをはじめ、シナモンに含まれる成分と健康との関係についても研究が続けられています。
日本では近縁のニッキが八つ橋やニッキ飴などに使われ、独自の食文化として親しまれてきました。普段何気なく食べているお菓子にも、植物の種類や歴史をたどると興味深い背景があります。
紅茶やコーヒーへ少量加えたり、果物やヨーグルトと合わせたり、料理のスパイスとして使ったりと、シナモンの楽しみ方はさまざまです。
種類や香りの違いを知りながら、自分好みのシナモンやニッキの楽しみ方を見つけてみてはいかがでしょうか。
参考情報
- 厚生労働省 eJIM「シナモン」
- National Center for Complementary and Integrative Health(NCCIH)「Cinnamon: Usefulness and Safety」
- 公益社団法人 日本薬学会「シナニッケイ」
- German Federal Institute for Risk Assessment(BfR)「FAQ on coumarin in cinnamon and other foods」
※本記事は、シナモンやニッキなどの食品・香辛料に関する一般的な情報を紹介しています。治療中の疾患がある方や医薬品を使用している方が、通常の食品として使用する範囲を超えてシナモンを継続的に摂取する場合は、医師・薬剤師などの専門家へご相談ください。